その日はやってきました。
久々にC君も交えT君と私の3人でT君の家に集まりました。
その日は私が当時渾身の力を込めた新曲を持っていき2人の前で披露しました。
曲がエンディングを迎えます。
しばしの沈黙のあとC君が口を開きました。
「・・・、組もうぜ。」
そうです、C君が私の曲を聴いて評価してくれ一緒にユニットを組んで曲を作ろうと言ってくれたのです。
その後もC君は、歌詞はどうやって作ったのかなど、興奮した様子で私に話を続けました。
普段気難しい無口なC君がそこまで熱くなるのを見たことがなかったので、私は心底うれしさを覚えるとともに、唖然としてしまいました。
そしてその時T君は、一言もしゃべらなかったのを覚えています。
また、今思うとそのC君の「組もうぜ」という一言は私が作曲面でT君を超えた瞬間だったと思います。
これから後のことは、完全に私が今現在当時を振り返って「そうだったんだな」と勝手に思い返していることなので、おそらくT君の口から語らせれば違った描写となると思いますが、自分なりに書いてみたいと思います。
「組もうぜ」発言の後も、T君との曲を聴かせ合う日々は続きました。
ですが、なにか距離ができていたように思います。
そしてある日、私はT君に絶交を宣言されました。
私の至らない部分をさんざん非難されての絶交で、さすがに応えましたが思い当たることはたくさんあり、反省しつつも、T君の宣言どおり私はT君とはそれっきり会っていません。
T君の私への非難は苛烈を極めました。
当時、私はかなり反省しました。
ですが、なにか引っかかる部分があって、それがなんなのか最近までわかりませんでした。
そしてごく最近です。
T君が本当に気に入らなかったのは、私の至らない部分もその一つだと思いますが、自らが慕うC君が、当初自分が作曲の手ほどきをしていた私の作品を手放しでほめたことだったということに気づいたのは。
自分の作曲能力を自慢するような終わり方で面はゆいし唐突ですが、これが私とT君の別れです。
その後、T君がどうしているか全く知りません。
そして、時間を経た今、T君ともう一度会って、以前のように仲良く語り合いたい、とは全く思いません。
一気にまとめにはいりますが、
きっとT君の人生にとって私は、人の曲を遠慮なく酷評する失礼な奴という、モブキャラで、それ以上の意味を持ちません。
そして私の人生にとってT君は、作曲開始初期に手ほどきをしてくれた友人、という意味しか持ちません。
そうやってお互いがそれぞれの日々を送っていくんだと思います。
前向きなことを言うのであれば、T君やC君に聴かせてまた「組もうぜ」と言ってもらえるような曲を作っていきたい、そんなことを思ったり思わなかったり。
おわり