なかなかおもしろい本に出会わない、とは以前書きましたが、そんな中でも私なりのおもしろい小説の見つけ方、選び方を書いてみたいと思います。
おもしろい小説の見つけ方、選び方とは言っても、正確には「おもしろくない小説の避け方」といった方が適切かもしれません。
いくつか列挙します。
①「抱腹絶倒」、「痛快エンターテインメント」、「胸に突き刺さる」・・・、こういった惹句がついている作品は避ける
これらの惹句は、事実の裏返しであることが多いです。作家はもとより編集者が読んで本当に抱腹絶倒したかはなはだ疑問です。
②男性作家が描く女性主人公、あるいは女性作家が描く男性主人公の小説は避ける
これはもちろんものによるし、例によって差別的な意図は全くありません。
どういうことかというと、その作家にとって理想の異性を見せつけられているようで気分のよくない場合が多いのです。ある種の性癖を見せられたような気持ちになります。
無論、力のある作家はこんな問題は軽々と乗り越えることは言うまでもありませんが。
③なるべく自分より少し年上の作家の作品を選ぶ
これは、やはり作品にはその人となりが出るもので、若い作家には若さが出るし、ベテラン作家には老獪さが出るものです。かといってあまりのベテラン作家が若者を描こうとすると、悲しいかな無理は出てしまいます。
②同様力のある作家はその限りではないと思いますけどね。
これらを踏まえて、おもしろくなかった小説を2つ取り上げます。
まずは②に当てはまったケース。
「私という運命について」 白石 一文
おそらく10年ほど前に読んだ作品だったので内容はほとんど覚えていません。
ですが最後の最後に作家の「女の幸せとはこういうものである」という持論が述べられていたことに激しい嫌悪感を覚えたことは心に残っています。
男性の私から見ても、よけいなお世話と言いたくなりました。
次に②と③にあてはまったケース
「彼女の恐喝」 藤田 宜永
もう鬼籍に入られた作家の最晩年の作品で、発表当時で私よりも何十歳も年上の作家です。
これも内容はほぼ忘れてしまいました。
彼女が恐喝するのでしょう。
ただ、この記事を書いていて内容を少し思い出してきました。
たしか主人公である二十歳そこそこの娘が、60歳近いおじさんの非違行為らしきものをたまたま目撃して恐喝するというものです。
しかし、あらゆる説明を省略しますが、その一方でその二人はなぜか恋に落ちます。
二人の間に体の関係はなく、プラトニックな恋、らしいです。
そこで②・③のケースです。
・・・、私には、恋にあこがれる大ベテランとなった作家先生が、男性不能になったおじさんを主人公に無理やり恋愛を描こうとした作品にしか見えませんでした。
(一応お断りしますが、作家先生に対する中傷ではなく、あくまで作品に対する批判です。)
私にはどうしても、魅力的な二十歳そこそこの女性が還暦間近の男性を愛する描写がリアルに伝わってきませんでした。
そしてもう一つ。
この二十歳そこそこの女性が、部屋の中でウサギかなにかのぬいぐるみに話しかける描写が全体を通して出てくるのですが、その名前が「ピョン太」なのです。
ぬいぐるみに話しかけるのはいいとして、今どきの女性が「ピョン太」って名付けますかね・・・。どうしても③のケースが頭をよぎります。
ということで本日の結論としては、アマゾンのレビューと星の数は結構参考になるので、☆4.5くらいの作品を選んでみては?ということです。