フランス語で下絵やラフスケッチを意味する言葉です。
私は絵画も好きなので、いつか美術用語をタイトルにした曲をつくりたいと思っていたので興味を惹かれ読んでみました。
ネタバレありの読書感想です。
簡単に言うと、二人の男女の20歳くらいから50歳くらいまでの恋愛を、その女性の方をモデルにした絵画、つまりはエスキースをキーにして周りの人たちを絡めて描いた作品です。
各章が連作になっていて、最後にきれいにつながるような構成になっています。
全体を通して楽しめましたが、気になったところを挙げてみたいと思います。
まず、主人公の男性、ニックネームが「ブー」です。
登場時に本名や由来が描かれなかったので、何かしかけがあるんだなと思い読み進めましたが、最後にその必然性やしかけが明らかになります。
ですが「ブー」というとどうしてもブタさんとか、太っちょの子どもなどが想起され、世界に浸るのにネックになりました。
次に、タイトルにあるように本作は「赤」と「青」がモチーフとなっています。
各章において赤と青が、絵の具やタワー、飲み物などの色に投影されて描かれていきます。が、最終章においての投影が、「青」は男性のひげのそり残し。これはいいとして「赤」が女性の生理でした。主人公の女性が中年となり「生理が上がった」と言う場面があるのです。
偏見を持つつもりはないのですが、急に生々しい、あるいは生活感が出てしまうのは、「ブー」と同じく世界に浸れずに浮世に戻されてしまう気がして、この投影は思うような効果が出ていないように思います。
これは、私が男性だからということではなく、例え女性であっても同じような感想を抱く読者はいるのではないでしょうか。
また、本作は、先述のとおり主人公の男女が20歳から50歳くらいまでを通して描かれるのですが、これも偏見を持つつもりもないのですが、「50歳」という描写はやはり生活感が出すぎます。
本作においては「50歳」までを描く必然性が十分に描かれていますので、これはもう好みの問題です。
私なら、せめて30代前半くらいまでをうまく描いてほしい、という感想を持ちました。
あとは、これこそ好みの話ですが、恋愛ののほほんとしたテイストではなく、第2章で描かれた額縁職人の青年を主軸に悪戦苦闘、そこに少しの恋愛を描くなどした作品を読んでみたいと思いました。
最後にタイトルについてですが、「赤と青のエスキース」の方が内容に合っていないですか?私は「の」だと思って読み進め、読後に「と」であることに気がつきました。
いずれにせよ、もう1作読んでみたい、そんな風に思わせる作家の1作でした。