「月の立つ林で」 青山 美智子

先日紹介した「赤と青とエスキース」が割と感触がよかったので読んでみた作家の近作となります。

ネタバレがあります。

 

赤と青と~同様、連作の果てにきれいにつながる構造です。

タイトルが示すとおり「月」が、正確には「月をテーマに話すポッドキャスト番組」が全体を通してキーとなって話は進んでいきます。

 

このポッドキャスト番組ですが、出だしはこうです。

「竹林からお送りしております、タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな」

前段はよしとしても、後半の「かぐや姫は元気かな」に一見してひっかかりを覚えました。

いえ、正直言って鼻につきました。しかし、そのひっかかりは恐らくストーリーに重要な意味を持つと推測しながら読み進めました。

読み進めた結果、予想どおりこの「かぐや姫は元気かな」が大きな意味を持っていました。

このポッドキャストは高校生の男子が放送主であり、家を出た、月が好きな母親にどうにかして届けという思いで放送していたものだった、というものです。

ですが、母親に呼びかけるに際し「かぐや姫は元気かな」は、母親がかぐや姫に思い入れがあったとしてもその表現が拙すぎます。

 

この高校生、月についてのうんちくをぽんぽんぽんぽんしゃべるんです。

さながらおしゃべりなおじさんのようにすら映ります。それなのに急に「かぐや姫は元気かな」で、高校生たるこどもっぽさが、いえ、高校生であることを差し引いても余りあるこどもっぼさが出てくる。それがこどもが運営するポッドキャストのありのままと言えばそれまでなのですが、気になって世界に浸りきれませんでした。

 

ストーリーとしては全体的に凡庸です。

かぐや姫は元気かな」以外は、特に破綻したような箇所もありませんでしたが、おそらく本作、そして作家の作品は対象年齢が10代くらいかと思います。

 

私にはちょっと遠い世界です。

 

今後は作家の作品はいいかな、といったところです。