数年前、私が勤務先の人事部というところで新規採用に携わっていた時の話です。
採用試験は、書類審査から始まり筆記試験、グループディスカッション、そして2度の面接を経て晴れて合格者が決まります。
私は事務局という立場だったのですが、1次面接までは1票を持っていてその選考に携わっていました。
筆記試験の合格者によるグループディスカッション。
数十人の受験者には様々な個性が垣間見えます。
黒い革靴に真っ白な靴下がのぞく人、終始キョロキョロしている人、手を太ももの間に挟みながらディスカッションする人、聞かれてもいないことを延々と話す人・・・。
そんな中一人の受験生が私の目を引きました。
述べる意見は理路整然、それを朗らかに伝えます。
他の参加者の意見には控えめながらも的確な補足。
笑顔が印象的な女性でした。
グループディスカッションが終わり採点結果を集計します。
件の女性、Bさんとしましょう、Bさんは順当に合格し最終面接に進みました。
最終面接進出者を見渡すとさすが粒ぞろいで、ポテンシャルを持った受験生が出そろいました。
ですがBさんの総合力はずば抜けていました。
当然受験生全員を平等に見ていたつもりの私ですが、彼女の持つ個性、力がこれからどう輝いていくか見てみたい、そう思ったのも事実です。
それから、事務局である私は最終面接の日程を組み、真摯に面接に臨んでくれる受験生との再会を楽しみにしていました。
そして、心のどこかでBさんとの再会を特に心待ちにしている自分もいました。
最終面接当日。
欠席者も出ず、1人1人受付を済ませ面接会場に送り出し、緊張がほどけた顔をした受験生の帰宅を見送ります。
面接の日程も中盤に差し掛かりました。
次はBさんの番です。
が、Bさんはなかなかやってきません。
優秀なBさんです。他に既に内定を得てしまい、こちらの試験はキャンセルしたのかもしれない・・・。
そんな思いを抱き始めたころBさんは到着しました。
実はBさんは十分時間に間に合うように到着しており、そのあせりはいかに私がBさんの到着を心待ちにしていたかを示すものです。
前回同様爽やかな笑顔で自己紹介するBさんとの再会を喜びつつも、無論恣意的な対応はしません。ほかの受験生と同じように面接会場に送り出します。
そして、Bさんをはじめ最終面接は全員無事終わりました。
次は各面接官の採点結果の集計です。
面接官から1人ずつ採点表が寄せられ私は集計を行います。
8人の面接官のうち7人から採点表が寄せられました。
採用予定人数は7人です。
そしてその時点でBさんは6位。
意外とBさんの評価は高くないものだと思いながらも、もはや私の関心はBさんが何位で合格するかという一点に絞られました。
最後、採点表を届けた面接官、D部長としましょう。
D部長はこの採用プロジェクトの責任者です。
D部長の採点表を開封します。
D部長がBさんに付けた点数は・・・。
最低の1点でした。
参考までに、様々な角度からなる採点表は20点満点で、D部長はその他の受験生に対し最低でも10点はつけていました。
つまり、Bさんに対してだけ、あえて低評価をつけたのです。
つづく