仕事をしていてふと思い出したことを書きます。
私はとある会社の本店で働いていて、全国にはその支店があります。
当然本店と支店は密にやり取りを行います。
入社後間もなく経験が浅かったころ、とある支店にいつもどおり電話をし担当者を呼び出した時です。
電話の向こうでこんな声が聞こえました。
「はい、無愛想な人から電話だよ〜。」
そうです。
私はその支店では「あの無愛想な人」として通っていたのです。
呼び出された担当者は半笑いで電話に出て私の用件を聞きます。
コミュニケーションが苦手な自覚がある私です。
その形容はなかなかのダメージがありました。
件の支店には当然その後何度も電話する機会がありました。
その度に例の「無愛想」発言が、電話の向こうから聞こえ、そして担当者は半笑いで電話を代わります。
毎回この担当者の女性に電話することはとても苦痛でした。
「無愛想」の一件以来、私なりに少しでも愛想よく、感じよく電話に出るようにしたつもりです。
ですが、愛想よくする、ということは一朝一夕でできるようになるものではありません。
その支店の担当者の半笑いは変わることはありませんでした。
話は少し変わります。
その本店と支店の関係性ですが、私が入社したときはかなり密接で、ともすれば度を超えたズブズブ具合でした。
電話する際は必ず仕事以外の世間話をする風潮があって、ひどいときはきつい下ネタまでしている人もいて、それは聞くに堪えないものでした。
ですが経験不足の当時の私は、自分も下ネタを話せるようにならなければならないのではないか、という間違った焦りすら覚えていました。
無論、そんなことをする必要はありません。
話は戻ります。
「無愛想」のくだりから時は流れて幾星霜。
私は幾つかの部署での経験を積み、また例の支店に連絡をとる部署に戻ってきました。
入社当時と同じように支店に電話をします。
かつての担当者の女性は既に退職していました。
私はと言えば、経験を積んだもののやはり気の利いたことは言えず仕事に徹するだけです。
そしてとある日。
その日は本店と支店の担当者が集まる会議が行われました。例の退職した「無愛想」の女性の後任の方とも直接お会いすることができました。
私はやはり気の利いたことは言えず、「いつもお世話になっております。」程度のことしか言えません。
するとその後任の方は言いました。
「いつも丁寧にご指示いただきありがとうございます。他の人には流されるようなことも丁寧に対応していただいて助かっています。」
気の利いたことも、ましてや男同士が仲良くなるのに効果的と言われる下ネタも言えない、言うつもりもない私が、自分なりに少しだけコミュニケーションできた瞬間でした。
不器用な私にとっては、時間をかけて、人より遠回りをして前に進んで行くのが唯一の道だったのです。