それはかつて残業中にあった出来事です。
私の仕事は典型的デスクワークですが、その場合1年前、あるいは2年前と、過去の事例を参照しながら今目の前にある案件に取り組むのが常です。
とある日。
私は進め方に迷う案件に出くわしました。
例によって過去の事例を紐解き対応策を検討します。
すると、それらしきデータが見つかり参考にした結果、無事解決することができました。
私は無事解決できてホッと・・・、しませんでした。
なぜなら、その参考にしたデータのファイル名が「冗談じゃねえよ」だったからです。
もう一度書きます。
皆が、将来に向けてたくさんの人が閲覧するファイル名が「冗談じゃねえよ」だったのです。
しかもその類の名前のファイルが何十個という単位で見つかったのです。
私はそもそも、仕事において文章、話し方、ともに俗語で話すことが好きになれません。形に残る残らないを問わず、仕事である以上それなりの格式のある言葉を使いたいのです。
そんな私です。
「冗談じゃねえよ」というファイル名が許せないのは言うまでもありませんが、私を
激怒させたのはそれだけではありません。
私はその類の名前のファイルを一つひとつ、データの中身を示すようなファイル名、例えば「20250924新規受付分」等に塗り替えていったのですが、おおかた塗り替え作業を終えたとき、私は見つけてしまったのです。
私より先に過去の「冗談じゃねえよ」というファイルを閲覧した人が、「冗談じゃねえよ、まったく」、「冗談じゃねえよ、うんざり」、「冗談じゃねえよ、ベイベ」・・・等々、悪乗りしてファイル名を改悪しているのを。
私の塗り替え作業はそこからさらに続きました。
正確ではありませんが、おそらく百個ほどは塗り替えたのではないでしょうか。
この「冗談じゃねえよ」と名付け、改悪した彼、彼女は2重の罪を犯しています。
まず一つは、先述のとおり、仕事において俗語を用いふざけたこと。
そして二つ目は、ふざけ方がおもしろくないこと。
特に「冗談じゃねえよ、ベイベ」にはまいりました。
おもしろくないし不愉快。救いようがありません。
翌日、私は部下に今回の件を報告し、同様のファイルを見つけたら、即刻名前を修正するように指示を出しました。
部下にものを頼むのが苦手な私ですが、そのときは、なぜか毅然として指示をすることができました。
この話には後日談があります。
私はこの件に内心かなり引っかかりを覚えていて、過去にさかのぼっていつ初めて「冗談じゃねえよ」というファイル名が登場するのか調べました。
その結果、何年も前のとある時期に「冗談じゃねえよ」が初登場しているのを確認しました。
ファイルには作成者の名前が記録されています。
それは、とある女性職員でした。
私は常日頃から自分の皮膚感覚というものを重視しているのですが、その女性職員は、話したこともないのですが何か危ういものを感じていました。
まっとうな名前になったファイルと、自らの皮膚感覚に対する自信を得た、そんな話です。