「月の立つ林で」 青山 美智子

先日紹介した「赤と青とエスキース」が割と感触がよかったので読んでみた作家の近作となります。

ネタバレがあります。

 

赤と青と~同様、連作の果てにきれいにつながる構造です。

タイトルが示すとおり「月」が、正確には「月をテーマに話すポッドキャスト番組」が全体を通してキーとなって話は進んでいきます。

 

このポッドキャスト番組ですが、出だしはこうです。

「竹林からお送りしております、タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな」

前段はよしとしても、後半の「かぐや姫は元気かな」に一見してひっかかりを覚えました。

いえ、正直言って鼻につきました。しかし、そのひっかかりは恐らくストーリーに重要な意味を持つと推測しながら読み進めました。

読み進めた結果、予想どおりこの「かぐや姫は元気かな」が大きな意味を持っていました。

このポッドキャストは高校生の男子が放送主であり、家を出た、月が好きな母親にどうにかして届けという思いで放送していたものだった、というものです。

ですが、母親に呼びかけるに際し「かぐや姫は元気かな」は、母親がかぐや姫に思い入れがあったとしてもその表現が拙すぎます。

 

この高校生、月についてのうんちくをぽんぽんぽんぽんしゃべるんです。

さながらおしゃべりなおじさんのようにすら映ります。それなのに急に「かぐや姫は元気かな」で、高校生たるこどもっぽさが、いえ、高校生であることを差し引いても余りあるこどもっぼさが出てくる。それがこどもが運営するポッドキャストのありのままと言えばそれまでなのですが、気になって世界に浸りきれませんでした。

 

ストーリーとしては全体的に凡庸です。

かぐや姫は元気かな」以外は、特に破綻したような箇所もありませんでしたが、おそらく本作、そして作家の作品は対象年齢が10代くらいかと思います。

 

私にはちょっと遠い世界です。

 

今後は作家の作品はいいかな、といったところです。

 

 

高橋幸宏ベスト10

高橋幸宏さんが亡くなりました。

 

私が今音楽をつくっているそのきっかけは、まぎれもなくビートルズYMOです。

ということは、強引かもしれませんが氏は私にとって音楽人生の育ての父とも言える人です。

 

私は凝り性でマニアなので、おそらく氏の入手可能な音源やインタビューなどには限りなく全て触れてきました。

 

今回の訃報に際し氏のインタビューを改めて読み返し、自分は音楽はもとより、氏の軽妙なジョークや微妙に斜に構えたような姿勢にどれだけ影響を受けているのだろうということを実感しました。

 

また、細野晴臣さんは近年高橋幸宏さんを「世界で最もおしゃれ」なんて冗談も含みつつ形容していましたが、本当に21世紀に入った頃くらいからは、氏のファッションも好きになりました。細身の体型にフィットしたトムブラウンなどのブランドのシルエットがよく似合うのです。

 

話は尽きませんが、今日は何となく氏の好きな曲ベスト10を挙げてみたいと思います。

あくまでソロ名義のベスト10となります。カバーもなしです。迷ったのが、コラボでもあるLEFT BANKとWATERMELON、こみ上げる涙と君のためにですが、これらは対象外としました。コラボもあり、となった場合はトップ5入りです。

 

 

 

 

10位 MIS

 

9位 All That We Know

 

8位 PRESENT

 

7位 きっとうまくいく

 

6位 DRIP DRY EYES

 

5位 手をのばせば~A touch of Love~

 

4位 使いすてハート

 

3位 僕は運命を信じない

 

2位 GLASS

 

1位 さえない気持ち

 

 

 

 

 

 

ヒーカップの怪

ヒーカップという言葉、ご存知でしょうか。

 

英語にすると「hiccup」。

本来は、しゃっくり、という意味の歌唱法の名前です。

 

簡単に言うと、歌っている最中に一瞬声を裏返させる技法、とでも言いましょうか。

例を見てみましょう。

 

 

おなじみB'zの「ultra soul」のサビです。

これがわかりやすい。

 

「ゆっめえじゃーないー あっれっもっこっれもおー」

 

の冒頭の「ゆっ」のところが「ヒーカップ」です。一瞬声が裏返っているのがわかると思います。

 

歌の上手い人は、意識しなくても自然にできてしまう、自然にしてしまっていることもあります。効果的に使えば歌にダイナミクスが出ます。

 

そうです。

「効果的に使えば」とても表現豊かになる技法なのです。

 

裏を返せば、必要以上に使えば耳がうんざりし、逆効果、ということになります。

 

juice=juiceというアイドルグループがいます。

以前もこのブログで取り上げましたが、大ファンです。

何しろつんく♂さんはじめ、いろいろな作家が提供する曲がいいし、メンバーもそれぞれ魅力的です。

 

ところが・・・、もうおわかりでしょう。

このグループの中に、1フレーズで1ヒーカップ以上のメンバーがいます。

1小節あたりで何回ヒーカップが登場するか数えてみようかと思ったのですが、中傷になりかねないのでやめます(でも数えてみたいな)。

これはもはや、本人と言うよりディレクターの責任のように思います。

 

過ぎたるは及ばざるがごとし。

ヒーカップは1曲につき1か所で十分でしょう。

 

先日亡くなった高橋幸宏さんもヒーカップの使い手です。

氏も1曲につき複数のヒーカップを使います。

ですが、いわゆる幸宏節というやつでしょうか、これはかっこいい。

ひとえに氏の歌唱力によるところも大きいと思います。

 

それでは本日の投稿は、氏のヒーカップがこれでもかとおそらく意図的に使われる名曲で終わります。

 

 

 

 

 

WALKMANとiPod touch

先日WALKMANの久々の新モデルが発表になりました。

 

今はスマホでも高音質で音楽が聴けるし、iPhoneに至ってはずばりiPodが格納されているので専用の音楽プレーヤーはなくてもいいのかもしれません。

 

ですが、私はスマホ、つまりは通信機器で音楽を聴くのが好きになれません。

スマホは電話、メール、ネット等のツールとして万全に備えておきたいので、それ以外の用途に使いたくないのです。それに、音楽を聴いている最中にそのプレーヤーに電話がかかってきたりメールの受信があったりすると興ざめするのです。

 

加えて私は音楽を聴きながらジョギングをするのですが、ジョギングをする時までネットにつながっていたくないのです。ジョギングの時くらい、世間から隔絶されて自分の世界に浸っていたい。そうなると、専用の音楽プレーヤーが必要なのです。

 

そこでWALKMANです。

先述のとおり、世間では専用音楽プレーヤーの需要は落ち込んでいるため、メジャーブランドではもはやソニーWALKMANしか生き残っていません。

 

 

以前、2年前のある日。

家を出て移動中に、愛用していたWALKMANが故障しました。

私は国産メーカーを応援したいという気持ちもあって、WALKMANを何台か愛用していました。

用事を済ませた私はその足で家電量販店に向かいます。

お目当てはもちろん最新のWALKMANです。

 

ところが、最新のWALKMAN・・・、高い、大きい、電池のもちが悪い等々どうにも興味が惹かれないのです。

そこで私は、禁断の決断をすることにしました。

 

そうです。競合他社のiPod touchに乗り換えたのです。

すると、料金、サイズ、電池のもち、等々、iPod touchWALKMANのはるかに上を行っていることに気がつきました。

 

いえ、それは知っていました。

 

そうです。私はiPod touchWALKMANのあらゆる面で上を行っているのを認めたくなかっただけなのです。

肝心の音質も、私の好みでは大差はありません。

 

それ以来2年間、今日に至るまで私のiPod touchは何の問題もなく使えています。

 

ところが先日、そのiPod touchも販売の終了がアナウンスされました。

そうなると、次に買い替えるとき私はWALKMANに戻らなければならない可能性が高まります。

 

そこで話が最初に戻ります。

 

現在のWALKMANのフラッグシップモデル、皆さんはいくらか知っていますか?

 

418,000円です。

 

ゼロをひとつ取り除いても41,800円です。

 

ええと、そんな高価な490グラムの精密機械を持って誰がWALKするというのでしょうか。

 

WALKしながら高音質で音楽が聴けるのがWALKMANの理念のはずです。

ということは、筐体の軽さやそもそも値段の手軽さを無視していいはずがありません。

手軽に、そして気軽に利用できれば、その時のメンタルは何よりも高性能なイコライザーになるしポータブルアンプになるのです。

 

ソニーさん、私をWALKMAN開発の客員アドバイザーにしてみませんか?

無給で結構です。

いえ、お金を払ってでも、40,000円ジャストの真の意味での高品質WALKMAN開発のアイディアを出させていただきます。

 

 

 

「赤と青とエスキース」 青山 美智子

エスキース・・・、エスキス。

 

フランス語で下絵やラフスケッチを意味する言葉です。

私は絵画も好きなので、いつか美術用語をタイトルにした曲をつくりたいと思っていたので興味を惹かれ読んでみました。

ネタバレありの読書感想です。

 

簡単に言うと、二人の男女の20歳くらいから50歳くらいまでの恋愛を、その女性の方をモデルにした絵画、つまりはエスキースをキーにして周りの人たちを絡めて描いた作品です。

各章が連作になっていて、最後にきれいにつながるような構成になっています。

 

全体を通して楽しめましたが、気になったところを挙げてみたいと思います。

 

まず、主人公の男性、ニックネームが「ブー」です。

登場時に本名や由来が描かれなかったので、何かしかけがあるんだなと思い読み進めましたが、最後にその必然性やしかけが明らかになります。

ですが「ブー」というとどうしてもブタさんとか、太っちょの子どもなどが想起され、世界に浸るのにネックになりました。

 

次に、タイトルにあるように本作は「赤」と「青」がモチーフとなっています。

各章において赤と青が、絵の具やタワー、飲み物などの色に投影されて描かれていきます。が、最終章においての投影が、「青」は男性のひげのそり残し。これはいいとして「赤」が女性の生理でした。主人公の女性が中年となり「生理が上がった」と言う場面があるのです。

偏見を持つつもりはないのですが、急に生々しい、あるいは生活感が出てしまうのは、「ブー」と同じく世界に浸れずに浮世に戻されてしまう気がして、この投影は思うような効果が出ていないように思います。

これは、私が男性だからということではなく、例え女性であっても同じような感想を抱く読者はいるのではないでしょうか。

 

また、本作は、先述のとおり主人公の男女が20歳から50歳くらいまでを通して描かれるのですが、これも偏見を持つつもりもないのですが、「50歳」という描写はやはり生活感が出すぎます。

本作においては「50歳」までを描く必然性が十分に描かれていますので、これはもう好みの問題です。

私なら、せめて30代前半くらいまでをうまく描いてほしい、という感想を持ちました。

 

あとは、これこそ好みの話ですが、恋愛ののほほんとしたテイストではなく、第2章で描かれた額縁職人の青年を主軸に悪戦苦闘、そこに少しの恋愛を描くなどした作品を読んでみたいと思いました。

 

最後にタイトルについてですが、「赤と青エスキース」の方が内容に合っていないですか?私は「の」だと思って読み進め、読後に「と」であることに気がつきました。

 

いずれにせよ、もう1作読んでみたい、そんな風に思わせる作家の1作でした。