桜が満開です。
この時期になると思い出すことがあります。
それが、タイトルの「桜-cherry blossom-」です。
これはとある私の古い友人がつくった曲のタイトルです。
音楽や文章など、好きな世界では妥協したくないし嘘をつきたくない私ですからはっきり言います。
とんでもなくださいタイトルです。
私の美意識で選択した言葉ではない、ということをまずお伝えしたいと思います。
解説するのも野暮ですがあえて言うと、「桜」も「cherry blossom」も王道のど真ん中すぎる言葉で、その2つが並ぶとおなかいっぱいなのです。
メインディッシュのプレートが牛肉と豚肉のみなのです。
彩りとなる野菜もないまま肉のみなのです。
おまけにそのメインディッシュを臆面もなくつなぐ「-(ハイフン)」。
これの使い方が輪をかけてださい。
対比する意味でいいタイトルを例として挙げましょう。
「sweet revenge」。
言わずと知れた、坂本龍一さんのアルバムのタイトルです。同名の曲も収録されています。
この「sweet revenge」。
先述の例で行くと「sweet 」は王道ど真ん中の「肉」と言えるでしょう。
そして「revenge」。こちらは本来の意味は「復讐」であり、王道に対する「邪道」と言える言葉です。その王道と邪道が絡み合って、芳醇な魅力、引きが醸成されているのです。
ただしこれは、「revenge」という言葉が「復讐」という本来の意味しか持たずまだまだ物騒な言葉だった1994年発売当時だからこそ成り立つ言葉で、昨今の「もう一度チャレンジする」という誤用が本来の意味にとってかわりポピュラーになってしまった現在においては成立しません。
「sweet 」も「revenge」も王道になってしまったのですから。
話は「桜-cherry blossom-」に戻ります。
このタイトルの曲をつくった友人はその後心を病みました。
一方私は当時からこのタイトルが受け入れられなくて、別の知り合いに意見を求めました。
私なりに真摯にそのタイトルのことを考え悩んだのです。
するとその知り合いも私と同意見で酷評し、こう言いました。
「そのタイトルをつけてしまうような人だから病んでしまうんだよ。」と。
これはなかなかに危険な発言ですが、私は首肯してしまいました。
私もその意見を求めた知り合いも、その友人の人間性をとやかく言うつもりはありません。
ですが、気恥ずかしい言い方になりますが同じアマチュアクリエイターの端くれとしては、そのタイトルを認めることはできないし、そのタイトルを平気でつけてしまう感性を受け入れることはできません。
長くなりました。
来年も再来年も、桜の時期に同じようにこのタイトルのことを思い出すでしょう。
その友人がつくったもう1曲のタイトル、「sweet world」とともに。