「Fake」 五十嵐 貴久

~興信所の調査員と美貌の東大生が、浪人生を東京芸大に受からせるためにカンニングを試みる。しかし、それは罠だった。全てを失った彼等は、浪人生の父親を巻き込んで、復讐のため十億円を賭けたポーカーの勝負に打って出る~

 

そんなあらすじて軽快に進む、クライムノベル、といったところでしょうか。

ネタばれあります。

 

不作ぞろいの最近読んだ小説の中では、順位をつければ少しだけましな方というところ。

 

ですが、このブログの読書感想でよく書いていることですが、やはりこの作品も変なところが引っかかって作品に入り込めなかったです。

 

まず、負け戦は徹底的に避ける用心深い敵(ラスボスとでも言いましょうか)が、いきなり身の危険を冒して自ら変装して探偵の事務所に乗り込むのが理解できません。

この設定ならば無関係の人を金で雇うでしょう。

 

また、探偵が10億円をかけたポーカーで用いるイカサマの内容が、小型カメラを会場に設置し相手の持ち札を隠し撮りし、遠隔地からプレイヤーに教えるというもの。

普通です。

 

しかもこの作戦は、先述の大学受験のカンニングで用いたものと全く同じ。

探偵が無策すぎますよ。大学受験の時点で失敗したのに、「用心深い」ラスボスにはバレますよ。

それに、カンニングに携わった東大生をラスボスが経営するカジノバーに送り込む・・・、バレますよ。

そして素人の初老のおじさんを賭場に送り込む・・・、何かしらの魂胆があることが見え見えです。

実際これらの杜撰なプランは全てラスボスにはバレていて、裏をかかれました。

最終的には裏の裏をかくんですけどね。

 

さらに、ラスボスの対抗策は、カジノのディーラーと結託して、いいカードを配ってもらうという誰でも考えつくもの。

 

さらに、裏の裏をかいて10億円を奪い取った後に、反撃を恐れて慌てている割には行動はのんびり・・・。

 

いっそのこと、最初の大学受験のときにカンニングを成功させて、入学後、その学生をからかいながら話を展開させたほうがまだましのような気がします。

言わば「なべやかん」の成功版として。

 

さらに、本旨から外れますが、本作に限らず

 

「ふ、藤井さん」

 

というように焦りを「ひらがなの頭文字プラス読点」で表現するのは苦手です。

表現として拙いです。

 

そうではなく、例えば「目が泳いでいた」や「せわしなく髪の毛を触った」などの表現で描写してほしい。

 

一気に醒めます。

 

さらに、探偵が友人の死を自分のせいだと考えるのはわかりますが、高校生が友人の家に入り浸って半ば子育てをするというのが現実離れしすぎです。

 

さらに、探偵の友人夫婦が、とても人間的にできた二人、という設定なのに、高校生でできちゃった結婚という展開。

 

実は父親が探偵だとかの秘められた真実があるのかと思いきや、ただ性的にだらしないだけ。真摯に愛し合ったというように描写されていましたが、そのようには見えません。

繰り返します。

性的にだらしないだけ。性欲に負けて親のすねかじりなんてみっともなくしか映らない。

 

 

探偵と東大生のちょっとした恋愛要素も、そう来るであろうことは読めましたが、普通です。

 

 

ちょっと読む本がなくなってきましたね。