正直に言う。
私はかつて自分は「頭がいい」と思っていた。
あまつさえ、「あの人は頭がいい」などと聞くと、「何をご冗談を。私の方が。」などとすら思っていた。
間違っていた。
私は頭がよくない。
地方のとある小学校、中学校で、私はイチバンだった。
続いて進学した高校で、私はイチバンだった、下から。
勉強がわからない、という経験が初めてで、どう対応していいかわからなかったし、さらに悪いことに、こんなことを覚えてどうするんだろう、こんなことに熱心に取り組んでどうするんだろう、と、勉強する同級生をバカにすらしていた。
この時点で、私はそんなことを考える自分が頭がよくないことに気づいていない。
それに気づいていないことがさらに頭がよくない。
それでも、勉強はじっくり時間をかけてしてみれば何となく理解できた。
しかしその途中で、教科書や参考書に対し、この書き方では伝わらない、誤解が生じる、あの点にも言及しなければ全事象は網羅できない、等々余計なことを考えてしまっていた。
余計なことを考える、それが頭がよくない。
広い意味でビョーキなのだと思う。
その後就職した。
典型的事務の仕事だ。
私は「できる人」ではなかった。
私は「できない人」だった。
自分なりに工夫して、彼らに追いつこうとした。
だができなかった。
そこでようやくわかった。
私は頭がよくなかった。
しかしこれで終わりではない。
私は自分が思っていた最低ラインを更新し続けている。