「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」 井上 荒野

各所での評価が高かったことから読んでみた作品です。

ネタバレありの読書感想です。

あまり期待しないで、読書の守備範囲が広がれば、という思いで読みましたが最後まで読むのが苦痛でした。

 

感想を書くのも苦痛ですが、記録用という意味でも少しだけ書きます。

 

まず、件の講師先生のしたことは、絶対的主従関係のもとに性的関係を強要しているだけなので最初から最後まで少しも共感できません。気に入った、いえ、ポテンツした女性生徒のみ下の名前で呼んでデレデレする描写は気持ち悪いの一言。

 

この作品は、只中にいた女性達が、あれは苦痛だったと気づき再生に向けて歩みだす物語ですが、被害女性達の心の再生に寄り添うことに腐心するあまり、物語、読者に訴えるものがなく、これであればネット上に無料で読める実話記事を読んだほうがまし。

 

最後の、ギクシャクしていた夫婦が仲直りし再生に向けて歩みだす描写も一緒に入浴し、キャハハ、とイチャイチャするだけでなんの深みもなし。夫婦間の秘事という難易度の高い描写に失敗するのみ。

 

いつも書いていますが、作品のテーマはなんでもいいし、荒唐無稽な設定でもいいんです。イチャイチャする描写でも構いません。ただそれを読者に上手に届けていただきたい。この作家にはそれができていません。

被害女性の苦しみ、加害男性の醜悪、それは描かれていましたが、それらは小説の素材にすぎません。素材は調理しなければ人前に出すべきではないのです。

 

たまたま手に取った作家の作品でしたが、今後、この作家の作品を読むことはないでしょう。