「君のクイズ」 小川 哲

前回の以下の記事まで、2回にわたりとある作品について書きました。

辛辣な文章ではありますが、私なりに真摯な思いを綴りました。

 

あまりこういうことは書いたことはないのですが、

当該記事は皆さんに読んでいただきたいですね。

 

 

 

 

さて、少なからず不快な思いをした上記の作品ですが、次に読む作品は何も考えずに気楽に楽しみたい、そんな気持ちで選択したのが今回の作品です。

 

クイズ、そしてクイズ番組がモチーフと言うことで、まあ楽しい作品だろう、そんな風に思って読み始めたのもつかの間、ひどい本でしたね。

前回の「未必のマクベス」よりは少々ましなくらい、といったところです。

 

結局は、前回同様気になった点を列挙していくスタイルの投稿にならざるを得ません。やはり引用は省略しながら進めていきます。

 

 

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1.

素人クイズ博士である主人公が、一般の人から見たクイズ王の印象を想像して。

「おそらく視聴者にとって僕たちのクイズの早押しは人智を超えているのだろう」

→そこまでではありません。あくまで「すごい人智」の範囲内です。いかにすごい知識、反射神経だとしても想像を超えたものではありません。

他の箇所でも「人智を超えた」という表現が何度か出てくるけど、乱発しすぎてすごさが伝わってこないよ!

 

 

2.

クイズ番組で、主人公がライバルの本庄に負けた際にヤラセのではないかという疑惑が視聴者に巻き起こって。

「世間のものの見方と自分のものの見方が違いすぎて」

→違わないよ!違いすぎないよ!「世間」も「自分」もヤラセがあったかどうか気になっているという点では全く一緒だよ!

 

3.

主人公が番組スタッフに連絡を取り真相を確かめようとしたが、どうにもはぐらかされて進展がない場面で。

「本庄本人に連絡を取ろうと試みた。連絡先を知らなかったので彼の大学の友人に聞いた。」

→連絡先の入手が簡単すぎるよ!ふつうはその入手に数工程描くものだよ!「彼の大学の友人」にはどうやって連絡を取ったんだよ!そしてその友人は見ず知らずの人に簡単に連絡先を教えすぎだよ!薄っぺらいよ!

 

4.

「クイズの神様、クイズストス」がいることを想像した。

→神様をアイコニックに表現する手法が名前の末尾に「ストス」をつける、というのが全然惹きがないし、クスっともできないよ!

 

5.

本庄の弟にも話を聞くことができた。

→唐突だよ!3.と一緒で本丸に簡単に近づきすぎだよ!主人公のあらゆる捜査がコンビニエンスだよ!

 

6.

主人公が難問に正解してコメントを求められて。

「以前似たような問題を出題したことがあったんです」

→「クイズ研究会で問題を作ってみたことがあったんです」って言わないとだめでしょ!ふつうの人は日々の暮らしの中で「出題」しないんだよ!

 

7.

主人公のライバル、本庄の弟に兄についていろいろ聞き終えて、弟のセリフ。

「兄の居場所がわかったら教えてください。あんまり家に帰ってきてないんです。」

→「あんまり」ってことはたまには帰ってきてるんでしょ!大学生がたまに外泊して何がおかしいんだよ!

 

8.

「『A』はシェイクスピアの戯曲だ。『B』、『C』の三作をまとめて『シェイクスピアの問題劇』と呼ばれる。」

→「それを言うなら「『A』はシェイクスピアの戯曲だ。『B』、『C』三作をまとめてシェイクスピアの「問題劇」と呼ばれる。」だよ!

 

9.

クイズ番組で、実は本庄は丹念な推理で回答を生み出していたのに、天才的なひらめきで回答した、という流れに番組サイドが持っていこうとしたことについて。

「本庄レベルになると、一文字聞いただけでクイズの答えがわかってしまうのだ」

→「~わかってしまうのだ、と番組は誘導しようとした」と書かないとだめでしょ!

いつの間にか主人公が本庄信者になったみたいに見えるよ!

 

10.

件のヤラセ疑惑があるクイズ番組について主人公が一言。

「あの問題も、もしかしたらクイズだったのではないだろうか」

→クイズだよ!「真っ当なクイズだったのではないだろうか」と書きなさいよ!

 

11.

主人公がクイズ番組を分析して。

「意地悪な問題は出題しない」

→出題者側だけでなく回答者側の視線も踏まえた描写だから「出題されない」だよ!

 

12.

本庄が商品のバーコードを見ただけで何の商品か当ててしまったことについて。

「そんなのは嘘だ。ものを買うときにバーコードを見る人はいない」

→そういう問題じゃないよ!それを言うなら「バーコードをみて商品がわかる人なんているはずがない」だよ!バーコードをちらっと見る人は多少いるよ!

 

13.

早押しクイズで、出題者が数文字しゃべっただけ、の段階で本庄が回答してしまった場面で。

「その時点は出題者の気分によって答えが変わる段階だ」

→気分で問題は変わらないよ!

それを言うなら「その時点では回答の可能性は絞り切れない」とかだよ!

気分で答えを変えたらそれこそアンフェアだよ!

 

14.

人生は常に2択を迫られている、と主人公が黄昏ている場面で。

「例えば、評判はいいが高価な冷蔵庫と、評判はそれほど良くないが安価な冷蔵庫のどちらがいいだろうか」

→あんまりいい例えじゃないよ!そんなのその人次第だよ!

 

15.

主人公が中学校一年生の時、クイズ研究部に入ろうとした場面で。

「クイズ研究部に行くと、中一と高一の入部希望者がいた」

→不自然な描写だよ!中高一貫ならそうである説明が必要だよ!

 

16.

主人公が件のクイズ番組を振り返り、「あのクイズはヤラセでも魔法でもなかった。だが、僕の知っているクイズでもなかった」

→「だが」の遣い方が微妙だよ!前段、後段ともに否定なんだから「そして」でつながないとおかしいよ!

 

17.

主人公が自身のクイズに対するありかたを分析をして。

「僕は、自分のために正解を積み上げる。誰かのために、視聴者のためにクイズをすることなんてできない」

→本庄だって結局は自分のために正解を積み上げたんだよ!主人公と本庄では確かにクイズに対する真摯な思いに違いはあるけどその分析は的を射てないよ!

 

18.

最終ページにて。主人公が「クイズとは何か」、と自身に問いかけて。

「クイズとは人生である」

→結論としてはそうせざるを得ないけど、軽々しい本作でそんなことを言われても全く説得力がないよ!

 

 

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だいぶ端折って以上です。

何も言うますまい。